ゲーム攻略マンの龍が如く極2の攻略日記

龍が如くシリーズ10周年記念本『龍大全』の感想

龍大全

今更ながら龍が如く極が発売された同日に出版された、ファミ通編集の『龍大全』を眺めてみた。
ページ数は208ページ、値段は3000円くらい。


全体的な感想は資料的な面で見ると浅めだったが、
開発インタビューはネットや雑誌では、基本的に名越稔洋氏と横山昌義氏の
インタビューばかりなので、他の開発者の話も聞けて面白かった点に尽きるのかな。
まあ10年間の総まとめ的な単行本だろうか。



総監督:名越稔洋氏のインタビューまとめ

里見会長のコメントを盾に龍が如く1の企画を通す!

龍が如く1の企画は、けんもほろろで落とされた。
ある日、セガサミーホールディングスの里見会長が、セガのプロジェクトを見るオフィシャル会が行われた。
そこに無理やり龍が如くのデモ映像をねじ込んだら、「なんであの落ちた企画がこの場にあるんだ!」と、
いろんな人にめちゃくちゃ怒られた。当たり前だけど会社をハメたようなもの。


里見会長は龍が如くを気にしてくれて、異質な物だから「なんだこれは?」と。
そして「こういうものいいね」というコメントをもらった。
その日を境に「会長、いいって言ってましたよね?」と言って、龍が如く1の企画を通そうとがんばった。
その一件があったので、龍が如くは粘りに粘ってプロジェクト化された。


『龍が如く』というタイトル名にまつわる話

『龍が如く』というタイトル名は、実は俺のアイデアではない。
いくつかの候補の中にあったものだったんですが、最終的に俺が正式タイトルを考えようと思っていた。
けれど妙案が思い浮かばず、試しにこの案で文字を配置してみたら『龍が如く』は字面がすごく格好良かった。
『如く』なんて、今どき言わない言葉のパンチも効いている。最終的にそれを超えるアイデアは出なかった。


作業を進めていたら、日本語的には「”龍の如し”じゃないとおかしいですよ」って言われた。
確かにそうだと思って書き直してみたけど、どうも字面が格好悪い。
』の濁点の響きとか、『』の直線が重なる強さを考えると『龍が如く』が圧倒的だった。
周りに馬鹿だと思われてもいいので、「龍が如くで行け!」と言ってそのままにした。


最初の頃の取材インタビューでは、「龍が如くって日本語的におかしくないですか?」とか、
しょっちゅう言われていた。
でも10年経った今では、○○が如くという言葉を普通に使う人も出てきて「勝ったな」と思った。
成功っていうものは、必ずしも正しさの積み重ねではないと今でも思っている。


龍が如く1の制作話

龍が如く1の開発費は、菊池正義チーフプロデューサーが見積もりを立てていた予想金額の倍になっていた。
怒られながらも会社に認めてもらったが、しばらくすると予算がまた足りなくなって、
叱られながらもプレゼンを行って予算を出してもらった。


しかし、また予算が足りなくなって3度目のプレゼンでは、当時CS事業部のトップだった
岡村秀樹会長に激怒されつつも、当初の見込みの3倍程度の予算をもらって本格的にスタートした。
プレッシャーだけでなく、社内では冷ややかな噂話も立ち、耐え切れずに辞めたスタッフもいたし、
泣いて相談に来たスタッフもいた。


だが、龍が如くが売れたことで周囲の目も大きく変わり、
以前「売れるはずがない」と散々なことを言ってた人が、
やっぱり売れると思ってたよ」と言って来て、すごく切なかった。


初回プレスで10万本満たなかった時は「死んだ」と思ったが、
予想を超えるスピードでどんどん売れて、ベスト版を合わせると100万本超え。
結果に思わず涙が出ました。



脚本:横山昌義氏のインタビューまとめ

龍が如くチームに参加して、みんな苦労して100億少女の理由付けのプロットや資料を作る中、
自分が用意したのは人物相関図だけだった。
人物関係は三角関係にして、「100億の理由は後で考えます」とプレゼンを行った。
そうしたら会議の後に名越に呼ばれて「シナリオはお前に任せる」と言われた。


馳星周先生からはリアリティーの付け方を学んだ。
龍が如く1では「この脚本書いた人は”書く”ということを舐めていませんか」と書かれてショックだった。
でも龍が如く2の監修はほとんど1発OK。指摘されたのは狭山薫の経歴だけだった。


秋山駿は言ってしまえば、大したことのない内容を長々と例え話を交える人間。
実はそこに秋山駿のパーソナリティーが詰まっている。
猿山とボス猿の関係に例えて話すのが秋山の個性。
彼は私の中でシティーハンターの『冴羽りょう』をオマージュしている。


私見だと桐生一馬はたぶん童貞。澤村由美が亡くなっても純愛を貫いているはずなんです。
冴島大河は脚本家・宮藤勘九郎さんのテイストを、
自分なりにフィーチャーしたキャラクターを作ると冴島大河になる。


名越にチェックしてもらうが、総ボツになることも多々ある。
龍が如く維新龍が如く0は総ボツになった。龍が如く4は1発OK。
脚本チェックの終盤には名越から「これ、誰が犯人なの?」と聞かれるが、
実は自分自身もギリギリまで決めていないので、言葉を濁して逃げる。


名越は龍が如く3では基地防衛のキーワードが欲しい。国会議事堂で暴れたい、
風間の親っさんにも会いたいと困ったリクエストをしてくる。
龍が如く2では名越が「大阪城が割れて、金色の大阪城が出てくるところが見たい」と言い始めた。
完全に無視して脚本を書いたら、名越に「おい、大阪城が入ってねぇぞ!」と指摘された。


10年間を振り返ると、褒められ続けた10年間でもあったけど、
その10倍くらいお叱りの声を受けた10年間だった。ネットではけなされる声のほうが入ってくる。
実際にプレイしてクリアして怒っている方が多く、イベントでは「よかったです!」と言われるが、
ネットでは一部「素人」と呼ばれる。裏方であるはずの私のことを話題にしてくださって感謝している。



モーション・スタント:折原純氏、小池達朗氏のインタビューまとめ

同じ桐生一馬でも、いろいろな人がアクションをつけている。
同じ人が同じキャラクターに芝居をつけると、どうしても似た感じになるので、
アクロバティックなアクションが得意な方だとか、
技ごとに中身を入れ替えてモーションキャプチャーで撮っている。


殴った時の爽快感も必要だと思い、地面に叩きつける技を撮るときは、
本番はマットを引かずにリアルな地面に叩きつけてた。
後になって薄いマットを入れる程度なら、データは大きく変わらないことが分かり、入れるようにした。


防具なしで殴ったり、リアルに顔を踏んだりもした。
実際にやると力を加減してしまうので、結果的に良いデータが取れない。
全てをリアルにやらずとも、ミットで殴ったほうが頭の揺れが良かったりと、色々ノウハウに加えている。


大きなケガはないが、気を失う程度なら10年間に1回あったくらい
それは頭を掴んで壁に叩きつけるアクションで、1テイク目がヌルくて「ヌルい」と言ったら、
見せ方の問題だったが意図が伝わらず、2テイク目で本気を出して脳震盪を受けた
病院に行かせたけど、何事も無く撮影に復帰していました。


10年を振り返ると印象深かったのは、龍が如く3の天啓『床地獄』です。
データが取りにくく、連続寝技の撮影だった。
バトル以外で楽しかったのは、龍が如く5で冴島大河の脱獄シーンのスノーモービル
スノーモービルに見立てたものをみんなで担いで、モーションを人力で再現したりしてた。



リードプランナー:堀井亮佑氏、田中武氏のインタビューまとめ

堀井氏はカラオケで歌える数千曲の持ち歌を持っている。
それが理由でセガに入社したと言ってもいいほどのカラオケ好きだった。
今は持ち歌が6500曲あり、Excelで詳細にデータ化して常に更新してる。
もはや趣味というよりライフワーク化している。


セクシー系のダンスとか、カラオケの澤村遥の振り付けなどは、
だいたい堀井氏が最初にどんなモーションにするか実演している。
自分が踊る動画を観ると恥ずかしいけど、割り切って思い切りやるようにしている。


タイアップではない店などもあるので、架空の店を名付けるのが結構大変。
実際にありそうで無い店名は難しい。風俗店などは笑える名前にしなきゃリアル感がないので必死に考える。
実在のお店と被ってしまって使えないことも多く、その時は落ち込む。


メインストーリーでは「こういう時、桐生一馬はこんなこと言わない」とか、ルールが決められている。
しかしサブストーリーやプレイスポットではそれが緩くて、ちょっとエロいこと言うくらいなら
大丈夫みたいなところがある。メインストーリーとは違った顔を描きやすい。


一番作るのに苦労したプレイスポットは『キャバつく』。
ギリギリのスケジュールで制作し、尚且つ、当初思ったように面白くなくて
やばい、クソゲーを作っているかもしれない」というプレッシャーで押し潰されそうになった(笑)


龍が如く5のアナザードラマは、プレイスポットだけでも過去最多なのに、
そのうえアナザードラマなんていうデカい要素が入ったので、とんでもないボリューム。
久々にプレイし直しているが「なんでこんなもの作れたんだ…」と自分で作っておいて引いた。
龍が如く5はゲームとしては最高傑作だと思っている。


龍が如く極の昆虫女王メスキングは、喫煙所での雑談から広がっていった企画。
メスキングなんてアイデアは、普通は冗談で流してしまうところだが、
でも開発チームはそれを真剣に形にしてしまう。
大真面目に悪ノリをするというのは、うちのチームの一つの美学ですよね。



リードデザイナー・プランナー:萩原麻依子氏、吉田幸司氏のインタビューまとめ

サブストーリーは基本的にキャラクターのバックボーンを描く目的のものや、
バカバカしいネタ系、画のインパクト重視
などカテゴリーが決まっている。
ネタの選別では、短くキャッチーなタイトルが採用されやすい気がしている。
ひとネタで勝負』の感じが強く、最初の候補は100ネタあるが埋もれることも多い。


お相撲さんや動物ネタが出るとキャラクター班は苦労する。ステージやキャラには制作上ルールがある。
例えばバトルが破綻させないために、道幅やキャラクターのサイズ制限が決まっている。
まともに作業すると大変になるので、同じキャラでも大きさの違うキャラを数種類用意したり、
変装バージョンを用意したりして、デザイナーと相談しながら、いろいろ誤魔化し方を試している。


誤解のようにないように言っておくと、吉田氏がキャバクラのストーリーを担当しているが、
キャバクラ好きという訳ではない。ドラマや映画、小説などでイメージを湧かせて、
時には取材などをして必死に書いている。お店で働いている知人などに、プライベートで何気なく
聞いた話を参考にしたりしている。設定をリアルに近づけすぎたキャラは不評なことが多い。


スタッフ自身がモーションキャプチャーをしたり、声を録っていることも多い。
萩野氏はよく駆り出される。龍が如く見参!ではフェイスキャプチャーされて、
鶴屋という店に入ってきた遥をいじめる先輩になっている。
ゲームプレイ中に、不意に強面の営業部長などが出てきてビックリしたりします(笑)


吉田氏は龍が如く3の食い逃げ犯。最初は太っていて逃げてくうちに痩せて、痩せている時の方。
バトル班の折原純氏が古牧宗太郎上山兄弟の声をやってたり、
ディレクターの細川一毅氏が亜門をやっている。社内でパイロット版を作る時にスタッフが声を当ててるが、
キャスティングする時間がないし、演技も上手かったので「古牧は折原さんで」と決まった。


サブストーリーの数が増えれば増えるほど、それぞれ干渉するケースが増えるのでバグも増える。
バグが出た時には丁半博打の「9・2(グニ)の半!」という音声データで認識できるよう、
自動的に鳴るようにしている。深夜に徹夜でバグチェックを行い、「グニの半!」と聞こえてくる。
本来なら悲しむべきことだが思わず笑ちゃう。



感想

龍が如く販売の様子のAA

他にもインタビューはありましたが、長文化しそうなのでそろそろ割愛します。
気になる方は本買って読んでください。
全体的に「あー、やっぱりそうだったんだ」と思った箇所がいくつかあった。


よく分からなかったのは、昔から龍が如くは実写化する傾向があったけど意図が分からなかった。
テレビドラマにしても視聴率は低かったけど、それでも実写化しようとするんだよね。
漫画やゲームの安易な実写化というのは、嫌われる行為だったかと思ったんだけど…、
それでも実行するのはリアリティー付けな何か理由があるんだと思った。


龍大全を読めば、横山昌義という人がひどい人に思えてくる

横山氏は脚本の勉強をした経験もなければ、小説すらほとんど読まない脚本家なのだとか。
これに関しては、昔から何度か名越氏が話していたので、とくに真新しい話でもないが、
ネットの批評を見てるとなると、だいぶ気にする性格なんだろうな…



一番最後の項目は、確かに私もそう感じた…。
例えばどんな話かといえば、声の収録でセリフを噛んでも全然悪びれのない役者にキレたらしく、
横山氏が鬼の形相で収録ブースの窓ガラスに、全力でペンを投げ飛ばすのだとか。
最近では性格が丸くなり、睨みを利かすだけになったようだ。


そのおかげで大御所の声優・俳優の収録で横山氏がいらっしゃると、現場がピリッと締まるのだとか。
まあチームでの仕事となれば、ある程度の叱咤激励はしょうがないことだと思っているが、
とくに横山氏が良い一面で語られている文章も無かったので…、
龍大全を全部読み終えたときに思ったのは、「触らぬ横山にタタリ無し!」と感じてしまったw


でもそれは裏を返せば、熱のこもった作品に仕上げようとした結果なのだろう。
どの業界のクリエイターを見ても、作品に愛情やら熱を注げない人が作ると、
すごく薄っぺらい物が出来上がってやっぱ駄目じゃないですか…。
それよか横山氏が一体誰にキレたのか気になるなw



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