FF15に関するインタビュー
UNCOVERED FINAL FANTASY XVのイベントが終了し、日本ではファミ通2016年4月21日号、
電撃PlayStation Vol.612にて田畑端氏と野末武志氏のインタビューが掲載されてました。
以下はそれのまとめです。主にFF15の制作話やキングスグレイブFF15について語ってました。
田畑氏はFF15のディレクター、兼キングスグレイブFF15ではプロデューサーを務めている。
野末氏はFF15のシネマティックムービーディレクター、兼キングスグレイブFF15のディレクター。
FF7アドベントチルドレンの制作にも関わっていた。
タイトルやディレクター変更、開発チームがどういった意志でFF15を制作しているのか?
田畑:
最初になかなか発売できなかったFFヴェルサス13を待っていたファンに対して、
スクエニとして責任を果たしたいという思いがあった。
FF15として再出発した時に、絶対にやらなければいけないと思ったのはFFを近代化すること。
つまり、今の時代で通用するファイナルファンタジーにするということです。
そのためにはFFを挑戦者に戻す必要があると考え、やれることを全てやろうと決めた。
プロジェクトを引き受けた時、田畑DはFFというコンテンツをどう見ていたか?
田畑:
ナンバリングのファイナルファンタジーを制作した経験がなかったので、客観的に見ていました。
一つの見方として、かつて所属していた会社で作れるか、作れないかといった線引をしていました。
ナンバリングのファイナルファンタジーは、いくらでも突っ込みどころがある。
けれど「じゃあ、お前のところで作れるのか?」と言われると作れない。
それがナンバリングのFFに共通して言えることだった。
でもある時、「あれ?これは作れるかもしれない」とちょっと思えてしまった。
僕はFFをユーザーとしても体験していて、FF7の凄まじいパワーとエッジの鋭さを凄く感じているので、
あの作品がユーザーの間で伝統的な存在になるのもよく分かる。
でも、そのインパクトを超えるファイナルファンタジーは未だ出ていないんです。
それは現在のファイナルファンタジーに危機感を抱いているから?
田畑:
ええ、危機感はありました。でも引き受けた後のほうが増しましたね。
FF15として進めていくことになったとき、社内や他社、とくに海外のデベロッパーの反応などから、
自分が思っているよりも、FFはIP(知的財産)としてヤバいんだなという感覚が
どんどん増していって、リアルな温度感に直接さらされる立場になり、それを思い知った。
でもIPの危機感の前に、そもそも目指すものをきちんと作れていないという現実があった。
FF13も色々な厳しい意見があるのは分かるんですが、最初からそこを目指していた訳ではなくて、
目標はもっと高かったはず。
しかし、結果はリニア(一本道)だと言われる作品になってしまった。
それは狙ってやったのではなく、今までのやり方だとHDでの制作の壁を突破できず、
そこへ着地せざるを得なかった現実があったのだと思います。
どちらかというと、そういった現実をどう打開していくかという意味で重かった。
FFというIPはヤバいなという重さは、そこに上乗せされてきたんです。
そういった状況下で田畑Dはどう動いたか?
田畑:
ゲームチームもムービーチームも技術チームも一緒になった、独立した新チームを立ち上げた。
旧・FFヴェルサス13チームと合流して、FF15を制作することになる第2ビジネス・ディビジョンの
前身となるチームでした。
- ■第2ビジネス・ディビジョンについて
-
プロジェクトのチーム毎に区分けしたもの。
スクエニでは第○ビジネス・ディビジョンと呼んでいる。
第1~第10、モバイル事業部まであり、FF15の開発部が第2ビジネス・ディビジョン。
当時僕もそうですけど、みんなFF自体がピンチに陥っているというのは凄く感じていた。
旧・FFヴェルサス13チームは疲弊していて、
どこかの段階で気持ちをリセットしなくてはならない状態でした。
それは開発が長期にわたっていたからなのか?
野末:
そうです。再編が始まったとき、僕はヴィジュアルワークスという映像専門の部署にいた。
チームの真剣さは強く伝わってきて、僕らはグラフィック側からしか支援できないけれど、
独立したムービーの専門部署にいるより、すぐには移籍できなかったので、
ヴィジュアルワークスに在籍しながら席だけ先に移してチームと合流した。
- ■ヴィジュアルワークスについて
-
代表作品はFFやドラクエシリーズなど、ハイエンドなフルCG映像を
専門に制作しているスクエニの映像制作集団。ヴィジュアルワークス部。
ハイクオリティーなAgni's Philosophy(アグニズ フィロソフィー)の映像なども、
野末氏が制作に関わっている。
そもそもFF15としてスタートしたのはいつ頃なのか?
田畑:
2012年7月からです。とはいえ最初はFF15というプロジェクトとして、
正式に認められていたわけではなく、FF15をやるならこうするという企画書だけがあり、
会社にお願いして挑戦させてもらうところからスタートだった。
社内的にFF15として進めるかどうか判断するところから始めたのか
田畑:
そうです。可否を会社にジャッジしてもらうために「半年ください」と直訴して、
2013年1月に正式に認められて、2月からFF15プロジェクトとして進行したと記憶してます。
そうしてFF15はどうあるべきか、テーマを定めたいったのか?
田畑:
いえ、FF15をどうするかという具体的な話の前に、まだやるべきことがありました。
みんながファイナルファンタジーは勝てていないという現実と向き合い、
それを乗り越えるための覚悟を決める必要があった。
関係者全員の一致した見解として、HDでファイナルファンタジーは勝てなくなっている訳だから、
今までのやり方を踏襲(受け継いでそのまま実行する)のではなく、
HD世代で勝つためにやらなきゃいけないことは全てやる。
全員が挑戦者の意思を持って制作に取り組む、一つのチームを作るところから始めたんです。
まさに土台の部分から変えていったと
田畑:
はい土台から。そのためにルールも決めました。『ちゃんと朝来い』とか(笑)
それまではスタッフ間の関係性が、なあなあになっていて誰も指摘しないし、
そういう基本的なことができていなかったんですよ。
例えばミーティングにその人が遅刻してきた場合、「遅いよ、ちゃんとやれよ」と言えない。
それはおかしいので、できていない人は肩身が狭く、ちゃんとやっている人が堂々とできる職場にしようと。
常識的な職場環境にしていったと
田畑:
そうなんです。ちゃんと挨拶しようとか(笑)
何の権限もないのに、他人の仕事に駄目出ししてブレーキをかけるな、
会議をやっただけで仕事した気になるな、そもそも無駄な会議をするなといった普通のことです。
それで秩序が正されてくると、そこからはみ出す人があぶり出されてくる。
その人達については、これまでのやり方は変えられないと去って行った者もいるし、
改善してチームに残ると決めてくれた者もいました。
ルールが整った後は?
田畑:
組織のヒエラルキー(身分制度)をリセットしました。
というのもセクションのリーダーを務める人が、十数年もずっと同じ地位にいたりして、
そうすると当然スタッフ同士の力関係が決まっていて、物の本物・偽物や、チームとしての勝利条件ではなく、
その人の感覚や主観といった個人的な尺度に従う形で、みんなが仕事をしてしまう。
そういう不要な関係性をリセットする意味で、
「今からここは上も下もない、修羅の国だ!」という話をしました(笑)
修羅の国(笑) つまり実力主義にしたと
田畑:
はい。最初に全員と面談をして、「残るか残らないかは自分で決めてね。
残るからには俺の改革に従ってもらうよ。前はこうだったと言い訳するのはナシ」というのを伝えた。
それから「君は何ができるのか見せてよ」という話し合いを行い、
個々がチームに対して何ができるのかハッキリさせた。
そのうえで、あなたはバランス感覚が良いのでプリプロダクション(本格的な制作が始まる前の段階)の
フェースのリーダーね。これまでリーダーだったあなたはクオリティーの高いものは作れるけど、
他のセクションとの交渉や取りまとめは苦手だから、このフェーズでは部下ね。
と配置替えをしていった。超モメました。
でも変化に対してポジティブな人が多かったし、それによって自分が成長しているという実感を多くの人が
得られていたから雰囲気は良かったんですよ。見えないパワーバランスや、指示系統とは違う力学が
働かない組織になって、みんな自分のパフォーマンスを最大限に出せるようになった。
今まで挑戦できていなかった領域に踏み出せる人も増え、作品に反映されていった。
FFで勝ちたい、巻き返したいという逆襲に懸ける熱がチームにあったのだろうと思います
田畑:
その通りです。
FFは今はピンチだけど、みんな気持ちの部分では「でも俺たちは負けていない」と思っていたはず。
HDになって日本のゲームが欧米に負けていると言われている時も、
負けていたのはその時フロントにいた人達で、「俺たちはまだ、そこで勝負していない」と。
僕も日本のゲームだって絶対勝負できると確信していたけれど、当時は制作に携わっている
プラットフォームがHDではなくて、勝負の土俵に立てていなかった。
だからみんな「俺らが挑戦して成功しよう」というマインドを持っている。
「勝手に負けたことにしないでくれ、俺たちは負けてない」って。
具体的にどんなことを目標に取り組んだのか?
田畑:
例えば数字で言うと1000万本を目標にしています。FF13からすると飛躍している数字なので
現実感がないかもしれませんが、それを達成するために何をしなければならないのかを
意識することが大事なんです。そこは誤魔化さず、本気で取り組んできました。
あとは何に挑戦するのかを明確にしてきたました。
それはGTAを除く、海外のAAAタイトルに挑むというものです。彼らはHD時代になってから、
ブランド力を上げているタイトルで、1発ではなく積み重ねて評価を上げてきている。
しかし彼らが積み重ねている間に、ファイナルファンタジーは積み重ねられていないんです。
もちろん1発でそこまで辿り着こうとは考えていません。
当然それを超えることもできません。FF15が堂々とAAAのゲームと呼ばれるためにも、
すでにAAAと言われているビッグタイトルに挑むことが重要だと考えました。
FF15が9月30日に発売日が告知されました
田畑:
9月30日に発売します。地域によっては多少前後する可能性があります。
現状の手応えは9月30日です…と、ギリギリ言い切れるなって感じです(笑)
日本語版だけだったら万全なんですけど、今回はグローバルで発売するので、
ローカライズに時間をかけるために開発期間を圧縮せざるをえない。
僕らも踏み込んだことがない領域で、やってみないと分からない。
でも、それを承知したうえでの宣言なので9月30日の発売は守ります。
なぜ9月30日にしたのか?
田畑:
僕は最初はディレクターではなかったのですが、正式にその役目を任されることになったとき、
最初に決めていたのが2016年9月30日に発売するということだった。
それはチームにも即共有しましたね。
野末:
それが第2ビジネス・ディビジョンになった時だったので、2013年12月です。
プロジェクト立ち上げが2013年2月でしたよね。10ヶ月後に発売日を決めたのか?
田畑:
あてずっぽうに決めたわけじゃないですよ(笑)
そこまでにプリプロダクションやパーティカルスライス(ゲームの一部を完成に近い形まで制作する事)
を経て何かを作る際に、物量に対してどれくらいの時間とコストがかかるのかが見えていた。
これは意思の話です。最初に決めていた通りの計画で着地させようとしているだけで。
事業計画通りに積み重ねた結果とはいえ凄い。ゲーム業界ではなかなか聞かない話だ。
田畑:
出すということに責任を持ちたかったんですよ。
それとこの時期になれば、こなれたPS4やXbox Oneのタイトルも出てきて、
AAAクラスのゲームがバンバン来る。
それより後に発売するとなると勝負が見なくなってくるので、その前に出したかったというのもあった。
FF15は親子がテーマとのことだが、ゲームプレイのコンセプトはどうなのか?
田畑:
最初にキーワードを3つ決めた。旅と仲間、そして車です。
旅は本当に旅をしたような体験を、このゲームで味わってほしいということ。
そのためになるべくシームレスな世界を、ある程度引いた視点でとらえられるようにするなど、
旅を実感させるための手法を探っていった。
そして旅という体験を最大化するのが仲間の存在です。
彼らをリアルに感じられればパーティー全体に感情移入でき、旅で起こった出来事に一喜一憂できる。
そのために仕草や言動、ノクトとの距離感にまでこだわりました。
AI的にもアニメーション的にも一足飛びには完成度が上がらず、すごく地道にやらなければならない部分で
苦労も多いんですけど、誇れるものになってきたなと、彼らと一緒にいるのはとても楽しいですよ。
車は親子というテーマに基づいたものです。
ノクトと仲間たちはレギスの車で旅をします。車は親子を繋ぐもの。
ストーリー体験の軸であり、移動の手段であり、ゲームシステム的にはカスタマイズできるものでもあります。
車をカスタマイズできるんですか?
田畑:はい。変形して飛び立ちます(笑)
野末:
見ると大体笑いが起きますけどね。「こうきたか」と(笑)
その3つのキーワードが軸になるわけですね
田畑:
それから大切にしているのはユーザー体験です。
ゲームシステムから作っていたとか、世界観から着想してとか、ゲームの制作の流れには
様々なパターンがありますよね。FF15はユーザーにどんな体験をしてもらうかをまず考え、
そのためにどんなシステムにするか、どんな技術が必要か、どんなアートにするかを決めていった。
旅という体験をさせるためにオープンワールドが必要なのか?
田畑:
そういうことです。オープンワールドについては、最初にお話したFFの近代化も関係しています。
今、近代的なRPGを作るにあたって、オープンワールドを採用しない理由はないと思いました。
トレードオフでグラフィックの質が落ちるというのは、そこに挑まない理由にはならないなと。
なぜなら、海外のAAAと言われるRPGは全てオープンワールド。
世界に挑戦するにあたり、遊び方にはファイナルファンタジーらしさを残すものの、
一度そこを技術的に乗り越える必要がありました。
でもこれが、みんながもっとも向き合えなかった部分でした。
どうしてオープンワールドに向き合えなかったのか?
田畑:
やったことがないから、どこから手をつければいいのか分からなかったんです。
「できるかもしれないけど、世界がただ広いだけでスカスカになってしまうのでは」と懸念する者も多くて、
でもそこはやってみるしかないので、「大丈夫、スカスカでもいいから、とりあえずやろうよ」って言うと、
「それでいいんですか?」と声が上がる。
そこで語弊があるのを承知で言いますが、「ここにスカスカのオープンワールドの超名作があります」と、
あるソフトを見せました。PS2で発売された『ワンダと巨像』です。
この作品は巨人の所に行くまでは何もないけれど、すごく世界を感じることができる。
それがこの作品の世界観そのものになっている。それが分かり、おかげでみんなが勇気をもって一歩踏み出せた。
- ■ワンダと巨像について
-
ワンダと巨像は、2005年にソニー・コンピュータエンタテインメントより発売されたPS2用ソフト。
2011年にはPS3でHDリマスター版が発売された。
雑魚戦は無く、広いオープンワールドを移動し、巨大なボスがいる所へ行って倒すだけのゲームだが、
ボス戦は迫力・アクション性があり、当時としては斬新で好評なゲームでした。
世界観とゲームの構造が合っているという話ですね。結局FF15のオープンワールドはスカスカ?
田畑:
スカスカじゃなくなりましたよ(笑)
FF15では世界を生きたものとして作った結果、モンスターがいて、彼らには生態系があり、
町には人も住んでいる。昼と夜ではまるで様相が違う。
一つの世界ができているんです。そこに旅を楽しんでもらうための仕組みを乗せてます。
寄り道できるのか?
田畑:
もちろん。FF15には明確はストーリーがあり、目指すべき場所はあるが、好きなときに横道に
それて自由に行動できます。寄り道すれば新たな発見があり、何かしらのメリットを得られる。
サブクエストやモブハントなど、世界を巡るきっかけはあちこちにあります。
バトルはどうなってるのか?
田畑:
バトルは駆け引きに軸を置いたものになっている。ただキャラクターが強くなるだけでなく、
常に駆け引きがあることで、仲間との連携がより重要になり、一緒に戦っている実感を得られるはず。
連携自体も気持ちよく、攻防が一体となった流れるようなアクションが繰り出せます。
そうしたバトルを成立させるため、敵の思考や個性に相当こだわっているのも特徴です。
田畑Dの担当した作品では、マップの構造と敵の個性を組み合わせて設計してたが今回はどう?
田畑:
ボス戦ではそうした要素もあります。今回はマップとの組み合わせより、生態系を重視している。
モンスターの種類自体はそこまで作れないぶん、個性をハッキリさせる方向です。
印象に残るようなクセのある敵もいて、あいつが来たらこう立ち回るといった
RPGらしい攻略ができるようにもしている。
当時、マップとモンスターを同時に設計していたのは、その方が記憶に残る体験になるだろうと
考えていたこともありますが、ハードスペックの都合もあったんですよ。
PSPの頃は、限られた体験を印象深くするためにそうした手法を取っていた。
今回はプレイヤー毎に思い出に残る場面が異なるようにしたかったので、可能な限り自由度を高めている。
ゲームボリュームはどのくらいか?
田畑:
想定はエンディングまで40~50時間です。でも全く分かんないですね(苦笑)
ストーリーをチャプターで区切っていて、ここからここまで1時間と想定していても、
全然終わらなかったりする。平均プレイ時間はもう少し延びるんじゃないかなと。
テーマソングのアーティストも発表されました
田畑:
日本の方々には馴染みが薄いかと思いますが、フローレンス・アンド・ザ・マシーンは欧米では
知名度の高いアーティストで、独特の世界観を持ったアーティストです。
今回の取り組みにも興味を示してもらっていて、親子のテーマや仲間との絆など、
いろんなことを理解してもらったうえで曲を提供してもらっているんです。
以前にDLCなど発売後の展開を検討してたが
田畑:そうですね。検討は進めています。○○ができるようになるとか…。
VRを絡めたりしてる?
田畑:
第2ビジネス・ディビジョンとして基礎研究は進めている。発売タイミングではないですが、
FF15を長く楽しんでもらう手段として使う可能性はあります。
ただ、これはと思えるものがなければやりません。
VRでしかできない、体験したことのないもので、且つそれがFF15ならではのものにできるなら検討します。
野末さんは作り手としてVRに興味あるのか?
野末:
めちゃくちゃあります。研究中のものを体験させてもらったんですけど衝撃でした。
「この世界から出たくない」と思いました(笑)
ただ作るのは正直怖いです。相当いろいろなことを考えないといけないし、
人の命に関わる仕事に近いですよね。
だって一発で心臓マヒを起こせますから、刺激と安全のバランスには
皆さん苦労されてるんじゃないですかね。でも、とても面白いと思います。
FF15はゴールが見えているが、その先について何か考えているのか?
田畑:
FF15によって構築した色々な環境基盤を使って、新しいプランを始めるのが凄く楽しみです。
死ぬほど苦労して基盤を作ったので、そこからまた新しいものを生んでいける。
そのためにもまずFF15を成功させないといけないと強く思ってます。
プラチナデモに関するインタビュー
プラチナデモが当日配信には驚いた
田畑:
プラチナデモはもともとプレイアブルなテックデモを出すことを考えていたのですが、
そのままだと間口が狭いので物語を入れました。カーバンクルとのエピソードを楽しみながら、
FF15の技術を使った体験に触れてもらうという趣旨なんです。
ゲームの内容を切り出して、一部を体験してもらう体験版とは違います。
現時点で完成しているゲームの要素を切り出し、こうしたエピソードに仕立てて提供するもの。
少人数で二ヶ月ほど制作しました。
キングスグレイブFF15やブラザーフッドFF15への導線になってほしいと準備したものです。
プラチナデモをプレイすると、本編をプレイする際に特典があるのか?
田畑:
本編でプレイヤーを助けてくれる召喚獣としてカーバンクルが使えるようになります。
本編に用意する予定のゲームモードとも絡むのですが、
プレイヤーが戦闘中にピンチになると助けに来てくれます。是非プレイしておいてください。
キングスグレイブFF15、ブラザーフッドFF15に関するインタビュー
キングスグレイブFF15は、なぜCG映像作品にしたのか?
野末:
FFは好きだけど、歳を重ねるにつれてFFやゲームから離れていった方が多くいると思うんです。
そういう方たちとFF15の接点をできるだけ広げていくために、映像作品という形を選びました。
映像はハードを選ばないマルチプラットフォームですから。
キングスグレイブ15はいつ頃から制作を決めたのか?
田畑:第2ビジネス・ディビジョンを立ち上げた直後、チームに正式に野末が来たことで決めた。
野末:
FF15本編の前に、色々な方に作品との接点を持ってほしいと思っていて、
そのために何かしたかったんです。映像作品であれば最適だろうと。
田畑:
それで僕はFF15の発売前なら「すごく意味があるからやりたい」と言ったんだよね。
なぜ発売前の公開にこだわったのか?
田畑:
発売後であれば、いわゆるスピンオフということで腑に落ちやすいし、金銭の計算もしやすい。
発売前にやるとなると、そういう予測が立たない。
でもだからこそ新しく意味も価値も生まれる。我々はそこに張ったんです。
日本のPS4やXbox Oneのマーケットを広げたい、より良い状況を作ってから
FF15のローチンを迎えたいという意識が強くあった。
野末さんは発売前に出すことはプレッシャーにならなかったのか?
野末:
僕は結構アグレッシブなので、「めっちゃ面白いっすね」というノリでした(笑)
恐怖や不安は一切なかったです。
みんな本気なので、自然とそういう気持ちになっちゃうんですよ。
尺は110分もあるそうで、かなりガチ感がありますね
野末:
FF15が本気で取り組んでいるので、そこに対してキングスグレイブFF15が生半可なものだと成立しない。
最初から映像コンテンツとして楽しめるよう十分な長さを確保すべきだと考えてプランニングしていて、
脚本家には実力のある外部のプロの方、ハリウッドのスタッフにも参加してもらい劇場作品として作ってます。
ハリウッド制作は、どんな体制で行っているのか?
野末:
スーパーバイザーが集まった50人程度のチームが社内にあり、
世界各国のプロダクションと協力して制作している。
アサシンクリードのDigic Pictures、ジュラシック・ワールドやゲーム・オブ・スローンズなどの
ハリウッド映画を手掛けるImage Engineといったスタジオに参加してもらっている。
日本だけでチームを作ろうとすると500人は必要だったかなと。
朝はロス、夜はヨーロッパと、ずっとどこかの現場が動いている状態です。
今回の脚本は、映画業界の方々にチェックをしてもらっています。
ハリウッドでシナリオを見てもらって、毎日のようにミーティングを重ねてました。
ゲームと映画では骨格が全然違うんです。FF7アドベントチルドレンはゲームありきのシナリオでしたが、
今回は1本の映画として向き合って作っています。
- ■FF7アドベントチルドレンについて
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FF7 Advent Childrenは、FF7で登場したキャラクターをCG映像で描いた映像作品。
FF7のゲームが発売して、かなり年数が経過してから映像化された。2005年9月14日にDVDで発売。
FF7の2年後の舞台を描いたストーリーで監督は野村哲也氏、脚本は野島一成氏。
田畑:
既存のFFを知っていることが前提のシナリオでは駄目なんですよ。
今回のターゲットはFFから離れている人たちだったので、
もちろんファンの方は絶対に満足させるという全体はありましたけど。
作業はどのように分担しているのか? クオリティーの差も気になる
野末:
シーン毎に担当するスタジオを割り振る形です。
クオリティーについては、使用するモデルなどは弊社でコントロールしているので均一になっています。
もちろん、それぞれのスタジオの個性は出るのですが、それを50人のチームで制御しているので大丈夫です。
映像の制作にはゲームの技術も使われているのか?
田畑:
それは逆ですね。映像の技術をゲームに落とし込んでいます。
CGの技術的には映像の方が先を行っているので、それをいかにゲームの世界にリアルタイムなものとして
取り込むかが課題でした。またフルレンダリング用のアセットをいかに効率よく実機のデータとして
落とし込むかというところもありました。
FF7アドベントチルドレンから約10年経つが、その頃と比べて技術的にはどう変わったか?
野末:
FF7アドベントチルドレンの頃から残っているものは我慢強さくらいでしょうか(笑)
キングスグレイブFF15は全く別物と呼べるもので、技術的に同じものは何も使っていない。
FF7アドベントチルドレンとの差はハッキリと分かると思いますよ。
公開された映像を少し見ただけでも、CGなのか実写なのか分からないと思った
野末:
FF7アドベントチルドレンの時に感じた限界というのは、感情表現が情報量として少なくなってしまう。
なるべくリアルな人間に近いもので、しっかりとドラマを見せなきゃ映画じゃない。
そこはこだわって企画の時点からしっかりと組み立てていきました。
FF15の設定を知らずに見ても楽しめるのか?
野末:
もちろん。FF15では冒頭でノクトがよその国のお姫様(ルーナ)と結婚するために旅立ちます。
その裏でノクトの父であるレギス国王は、何をしていたかを描いているのがキングスグレイブFF15です。
ストーリーはFF15のゲームスタートから同じ時間軸で動いていきます。
ゲームをする前でも途中でも、終わった後でも、どのタイミングで見ても抱く印象は変わってくると思う。
田畑:
基本的に片方だけ体験する形でもOKです。
でも両方体験すれば極上。そういう造りになっています。
親子の物語なので、どちらから入ってもいいですが、本当に好きな方々には両方見てもらいたいですね。
野末:
FF15のテーマは親子ですが、キングスグレイブFF15では親であるレギスを表現している。
レギスはFF15とキングスグレイブFF15を繋げる存在でもあります。
田畑:
キングスグレイブFF15側でレギスのデザインを修正する必要があって、後からFF15側もそれに揃えたよね。
レギスは映像の品質に合わせたデザインに変えることにしたんです。
野末:
そうでしたね。当初の活力のあるデザインだと追い込まれていく
王を描くキングスグレイブFF15の演出に合わなくなって、生命力が衰え始めているのが感じられるように
リデザインしました。命がギリギリであるという設定があったので、それをちゃんと表現したかったんです。
それでFF15側も同じデザインに揃えたんです。ストーリーを再優先し、そうした変更を行った次第です。
田畑:
ゲームを実際に遊んでみて「何かお父さん違うな?」となってしまうと、全然繋がらなくなってしまいます。
そこで映像側に合わせました。FFヴェルサス13の頃から追ってくれてる人には
結構大きな出来事だったと思いますが、ユーザー体験をより良くするための変更だと理解してもらえると嬉しい。
ネタバレを気にして、本編まで待つ人もいるのではないのか?
田畑:
ゲームのネタバレはないので安心してください。
本編の物語とは別物なので、ただバックボーンは凄く分かると思います。
スマホでも見れますからハードルを感じさせないで気軽に見てほしいですね。
野末:
実はいろいろと隠し要素も入れています。
最初に映像を見た後にゲームをプレイして、またもう一度映像を見直すと、
「なるほどな」と思えるような構造を目指しています。
例えばルーナのように本編と映像の両方に出て、橋渡しをするキャラもいるんです。
FF15の冒頭でレギスがノクトを送り出すが、キングスグレイブFF15を見てからだと印象変わるか?
野末:
そこは気をつかったところです。当初は田畑から「開始5分で泣きたい」と言われていたのですが、
さすがに映画で開始から5分で泣かせるのは難しいと思って、課題を保留していたんですよ。
それがある時、ゲームの開始5分で泣けるような構造にすればいいんじゃないかと思いついた。
感情移入を促すのがグラフィックのクオリティー。本当にすごい、この人、実写でしょというLvで
野末:
前提として人間の表現が確立されていないと、感情移入しづらいですからね。
長編の映像を作るとなれば尚更です。技術的にもFF7アドベントチルドレンの頃からだいぶ進歩して、
無謀と思えるチャレンジもあったんですけど、あえてそこに踏み込んでます。
主人公を含めたキャラクターデザインもリアルだ。海外向けにも感じますね。
野末:
今回はキャラクターデザインというより、キャスティングという意識で取り組んでいます。
実在の方をモデルにしているキャラクターもいて、登場人物を一人作るのに
何人かでチームを作って担当するなど、今ままでの作り方とはかなり違います。
コアなファンの方はもちろん、新しいお客さんや過去にファイナルファンタジーシリーズを遊んでいたけれど、
最近はプレイしていないといった方にも観てもらいたかったので、なるべく現実感があるものにして、
話自体も外の世界の人の視点にしています。
ゲームファンじゃない人が見ても引き込まれそう
野末:
そうだと嬉しいです。そこからFF15を知ってもらって、キャラクターにより感情移入してもらいたい。
それが僕の目指しているところです。
セルアニメーションもすでに配信されましたね
プラチナデモ同様、セルアニメのブラザーフッドFF15も発表会後の配信となりました。
FF15本編の発売までに5話配信されます。1話10分程度で、1話は旅の最中にノクトが過去の因縁を
思い出すという内容になります。2話以降の公開時期はまだ未定ですが、
2話からは仲間との出会いが描かれていきます。
最後にユーザーにメッセージを
野末:
ファイナルファンタジーって、お祭りに近いものだと思うんです。
今回、それを最高のものにするために必死に準備しています。世界に挑むべくオリンピックに
行くようなものかもしれません。それを楽しんでほしいし、応援してもらえれば嬉しいです。
ゲーム本編はもちろんですが、映像作品の方も楽しみにしてもらえばと思います。
FFの本質って、新しい体験をお客さんに届けるというものがあって、
そういう意味でもチャレンジャーだと思うんです。僕らとしてはゲームも映像も共に、
できることは精一杯やってきました。革新的で新しい挑戦に挑んだFFになっています。
田畑:
FF15は世界に挑む挑戦者になります。うまく言えないんですけど、ユーザーの皆さんと目線を合わせて、
一緒に発売を迎えたい。もう一度、FFが勝つ姿を見せたいし、一緒に楽しみたい。
世界中の人を「日本のゲームはすげえ」って驚かせたいし、「日本のゲームは凄いだろ」って
誇れるようにもしたい。そのために、やれることは全てやってきました。あと少しがんばります。
キングスグレイブFF15などの作品も楽しでもらいながら、FF15の発売まで一緒に盛り上がれると嬉しいです。
我々は発売まで、やれることを全てやって過ごしますので。
感想
田畑Dが「FFをチャレンジャーに戻す」という発言はこれまでに何度も聞いたが、
その理由と経緯が理解できる内容だったかな。
なんつーか、スクエニは会社が大きくなりすぎたんだと思ったわ。
それ故にルーズな仕事ぷりになったと言うか、マンネリ化して非常識な職場環境になっていったのかもね。
開発側は、FF自体がピンチに陥っていたという認識は一応あったんだな…。
本当にFFがピンチだったのは旧FF14あたりだろうか?
スクエニを辞めてガンホーに拾われたあのお方は、会議中にツイッターでつぶやいてたくらいだったし、
その当時から「会議をやっただけで仕事した気になるな、無駄な会議を開くな」と感じてたわw
つーか、一般的な会社で会議中にツイッターとかやってたら、おそらく肩をポンポンと叩かれて、
「明日から会社来なくていいよ(^^)」と言われると思うぞ…。
上司がアレな人だと部下にも伝播するので、やっぱどこの会社も配置替えは必要だと思ったわ~
レギスのデザイン変更は、やっぱ旧デザインでは合わなかったんですね。
新デザインはあまり評判は良くなかったが、もう少し王として威厳がありそうで、
死にかけたジジイの演出を想定すると、やっぱ新デザインの方が適切だったかと思う。
だけど…プロンプトもデザインが変更されていた件も想い出してほしいところだw
開始5分で泣けるゲームって、一体どんなものかと想像してみたが、
坂口博信氏が出演してた闘会議TVの発言から推測すると、おそらくレギスが死ぬと仮定すると、
レギスがノクトを送り出すシーンが最後の別れになるシーンだと思う。
確かレギスは笑ってノクトを送り出したんだっけ? そこが泣ける光景になるのではないかと推測してます。
全体的に思ったことは、何事においてもチームで何かをやるのなら
「俺たちは負けていない、挑戦しよう!」と強い意思のある方々と組みたいものですね!
最近の国産ゲームは明らかに負けてると思う。そして負けてスマホゲーに逃げたような感じがするかなw
PS3時代は「海外はグラは凄いけど、日本は中身が負けてないぞっ(震え声)」、
PS4時代になると「まだCS作ってたの?(涙)」と、こんな感じだろうか…。
新しい意味や価値観を求めて、ゲーム発売前にキングスグレイブの公開に張ったことに情熱を感じます。
なんとなくFF15が勝ってほしいと思えた気がした。